対人地雷全面禁止条約成立から四半世紀~ロシア、ミャンマーの地雷使用に強く抗議します~

確立された国際規範

1997年12月3日にカナダの首都オタワにて対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)の署名式が行われてから今日で25年となりました。

加盟国は164ヵ国、過去5年において新規加盟国はありませんでした。しかし、加盟国が真摯に履行義務を果たし、貯蔵地雷や埋設地雷が着実に減っていること[i]、また犠牲者の数も条約成立当初の1/4まで減少しており[ii]、地雷の世界的廃絶に向けた国際規範は確固たるものになっています。

未だ未加盟の33ヵ国においても地雷対策に向けた着実な取り組みがみられます。

中でも、米国の地雷政策が再びオタワ条約批准に向けて動き出したことや、同国が条約成立以来一貫して世界の地雷対策において最も多くの資金を拠出している国であり続けていること、また世界で最も地雷の埋設密度が高いといわれている朝鮮半島の軍事緩衝地帯において、韓国が具体的な地雷対策に動きだしていることは特筆すべき進展です。

 

許されない暴挙

 こうした中で、本年2月にウクライナに侵攻したロシア軍や、昨年2月にクーデターを起こしたミャンマーの軍事政権が、今もって地雷を使用していること[iii]は、過去四半世紀にわたって築いてきた国際的な人道規範を冒涜する行為であり、決して許されるものではありません。

11月21日から25日にかけて開催されたオタワ条約第20回締約国会議の議長を務めたアルバロ・エンリケ・アヤラ駐ジュネーブ国連コロンビア大使は、7月20日にアムネスティ・インターナショナルが発表した報告書を受け、ミャンマーの軍事政権に対して「軍事目標と学校から家に帰る子供を区別できない武器の使用を直ちに止めるよう」強く求めました。

 

求められる地雷被害者に対する継続的な支援

オスロ行動計画[iv]の中間地点にあたる今年、締約国は期限付きの義務を可能な限り早期に、かつ2025年までに可能な限り完了するための努力を強化することを確認しました。

忘れてはならない大事なことは、地雷のない世界を達成することが、地雷被害者及び生存者のいない世界を直ちに意味するものではないことを認識し、被害者に対する持続可能で統合された支援を維持することです。

 

同会議に出席した地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)の国際大使、トゥン・チャンナレット氏は「すべての締約国は、地雷除去の作業をできるだけ早く完了し、生存者が地方レベルで支援を受けられるようにする必要があります。まだ締約国ではない国は今すぐ参加する必要があります。私たちは、私たちが生きている間に、地雷によって引き起こされる新たな苦しみのない世界を見たいと思っています。生存者には充実した生活を送る権利があります」と述べました。

 

地雷なきアジア、そして地雷なき世界を実現するために

条約加盟国の半数がアジア地域にある現状に鑑み、JCBLはアジアに立脚するNGOとして、ミャンマーの犠牲者支援を継続するとともに、韓国地雷対策委員会(KCBL)と協力し、南北朝鮮の軍事緩衝地帯(DMZ)の地雷除去問題にも目を向けてまいります。

条約成立25周年を機に、改めて地雷という無差別兵器が人の命や生活にもたらす問題を喚起するとともに、新たな犠牲者ゼロの早期実現と生存者への長期的な支援体制づくりに微力ながら力を尽くしてまいる所存です。

 

2022年12月3日

                     特定非営利活動法人 地雷廃絶日本キャンペーン
代表理事 清水 俊弘

 

参考リンク

JCBL - https://www.jcbl-ngo.org/
ICBL  –  ICBL- International Campaign to Ban Landmines | ICBL
Mine Ban Treaty – www.apminebanconvention.org

 

★この件に関するお問い合わせ 地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL) 代表理事 清水俊弘
E-mail: office@jcbl-ngo.org   携帯 090-8802-8898(清水)

[i] 2021年までに加盟国の埋設地雷約5500万個が廃棄された。加盟国99か国が廃棄完了を宣言している。ウクライナ及びギリシャについては廃棄作業が滞っている。

[ii] 2021年に記録された犠牲者数は5544人。3/4は市民である。うち死亡者は2182人、負傷者は3355人となっている。条約成立時年間およそ2万人といわれていた時代と比較して約1/4となっている。2014年までは一貫して減少傾向にあった犠牲者数だが、過去7年においては反政府武装グループなどによるIED(簡易爆弾)、IM(簡易地雷)の使用により再び増加傾向にある。

[iii] ロシア軍はウクライナ侵攻以来少なくとも7種類の対人地雷を使用した。また、ミャンマーの軍事政権は、広範囲に地雷を使用しており、特に携帯電話の通信塔その他の産業基盤周辺に埋設することで軍政に抵抗するグループの活動を阻害している。

[iv] オスロ行動計画:2019年に開催された第4回再検討会議において採択された、2020年から2024年までの行動計画。

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