ランドマインモニター2017 (”Landmine Monitor Report 2017”)
Major Findings(大要)

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主な出来事
対人地雷禁止条約が採択されて以降の20年間、条約は多くの人々の命を救うことに成功した。『ランドマインモニター2017』は、地雷のない世界に向けた歩みを詳細に報告している。対人地雷条約には現在162か国が参加しており、35か国が依然として非締約国であるが、基本的に条約の主な内容を順守している。2016年には、いくつかの政府軍と非国家主体(非政府の武装集団)が簡易型地雷を含む対人地雷を使用した結果、多くの被害が発生した。多くの国が地雷の除去を続けており、2016年の国際的な支援の額は増加した。しかし、除去期限内に除去が終了する見込みの国は少なく、被害者支援も十分ではない。

使用
2016年10月から2017年10月の間に、ランドマインモニターはミャンマー政府とシリア政府による地雷の新たな使用を確認した。両国は対人地雷条約の締約国ではない。

  • ミャンマー政府軍は対人地雷を過去20年間使用し続け、シリア政府軍は2012年から使用している。
  • 締約国による対人地雷の使用を疑わせる事実はない。

非国家の武装集団による対人地雷の使用は少なくとも9ヵ国で確認された。これらの国の中には締約国であるアフガニスタンやイラク、ナイジェリア、ウクライナ、イエメンも含まれている。

  • 1999年にランドマインモニターの発行が開始されて以降初めて、コロンビアで非国家武装集団による対人地雷の使用がなかった。
  • 「イスラム国(IS)(Islamic state)」による簡易手製地雷の使用により新たな被害者と地雷原が生まれている。

被害者
2016年は、2年連続して多くの被害者数を記録した年であった。これらの被害者の中には、地雷だけではなく、クラスター爆弾やその他の不発弾による被害者も含まれる。

  • 2016年、ランドマインモニターは8,605人の被害者を確認した。そのうち、少なくとも2,089人が死亡している。
  • 被害が多かった原因の多くは、アフガニスタン、リビア、ウクライナ、イエメンなどでの武力紛争によるものである。しかし、紛争中に正確なデータを収集することは依然として困難である。
  • 被害者数は2015年の大幅な増加に続き、2016年には1999年の9,228人以来もっとも多い被害者数を記録した。また、子どもの被害者はもっとも多く、簡易手製地雷による被害者数ももっとも多かった。

2016年の地雷による被害は52の国と4つの地域で発生した。このうち35か国は締約国である。

  • 被害者の多くは市民(78%)であった。この傾向は過去3年間と同様である。
  • 2016年の子どもの被害は42%であった。
  • 女性と女子の被害は16%を占めた。2015年から若干の増加である。
  • ランドマインモニターは、1999年に世界的なデータの収集を開始して以来、111,000人以上の被害者を確認した。このうち、80,000人は生存者である。

地雷原と除去
2017年11月現在、61の国と地域に対人地雷が残っている。

  • 61の国と地域の内訳は、33の締約国、24の非締約国、4つの地域である。
  • アルジェリアが2017年2月に除去を完了した。モザンビークは、2015年に除去の完了を宣言したが、2016年と2017年に未発見の地雷原が発見され、2017年5月に除去を終了した。
  • アフガニスタン、アンゴラ、アゼルバイジャン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、カンボジア、チャド、クロアチア、イラク、タイ、トルコには、100㎢以上の地雷原が残っていると考えられる。

約170 km2の土地が2016年に除去された。これは、2015年とほぼ同じ面積である。

  • 2016年には、232,000個の対人地雷と29,000個の対車両地雷が処理された。2015年から大幅な増加である。
  • アフガニスタン、クロアチア、イラク、カンボジアで過去最大の除去面積を記録した。これらの国で全体の除去面積の83%を占める。
  • 2012年から2016年の過去5年間で927㎢が除去され、110万個の対人地雷と68,000個の対車両地雷が処理された。

1999年に対人地雷禁止条約の法的効力が発生して以降、28の締約国、1つの非締約国、1つの地域が領土内の地雷原の除去を完了した。

  • ウクライナは、除去期限である2016年6月1日に除去が完了しなかった。除去期限の延長の申請と承認がないことから、条約の第5条に違反している状態である。
  • 地雷原の存在が確認されたヨルダンとナイジェリアは、条約第5条の義務を宣言し、新たな除去期限の申請を行うべきである。
  • 2016年の第15回締約国会議で、エクアドル、ニジェール、ペルーの3カ国の除去延長申請が承認された。アンゴラ、エクアドル、イラク、タイ、ジンバブエの5か国が2017年12月の第16回締約国会議で承認を得るために除去期限の延長を申請した。
  • 4つの締約国(チリ、コンゴ民主共和国、モーリタニア、ペルー)のみが条約で定められた除去期限内に除去を完了する見込みである。

 

地雷対策への支援
全世界の地雷対策プログラムへの拠出額は、5億6,450万ドルであった。これには、ドナー国による国際的な支援と被害国による自国のプログラムへの拠出が含まれる。2016年は2015年と比較して3,930万ドル(7%)の増額であった。

国際的な支援については、32か国が40の国と3つの地域に対して4億7,950万ドルを支援した。この数字は、2015年から8,550万ドル(22%)の増加である。

11の被害国が自国の地雷対策プログラムに8,500万ドルを拠出した。2015年と比べて4,620万ドル(35%)の減額であり、アンゴラ1か国で3,500万ドルを占める。

2012年から2015年の間、世界全体の支援額は3年連続して減少した結果、26%縮小した。しかし、2016年は大幅に増額し、過去最大であった2012年の4億9,890万ドル、2010年の4億8,040万ドルに次いで、3番目に多かった。

  • 拠出額の多いドナー5か国は、アメリカ、EU、日本、ドイツ、ノルウェーである。これらの国で全体の70%を占め、額にして3億3,560万ドルである。
  • 20のドナー国が2016年には支援額を増加させた。特にEUとドイツは増加した額の64%を占める5,500万ドルの支援を増やした。
  • 受け取り国の上位5か国は、イラク、アフガニスタン、クロアチア、カンボジア、ラオスであり、合計約2億5,870万ドル、国際的な支援額の54%を占める。
  • イラクがもっとも多額の資金を受け取っており、ドナー国の数ももっとも多い。

 

被害者支援
2016年と2017年の間、被害者を抱える締約国の多くは、リソースの不足からマプト行動計画の実施が困難な状況であった。被害者が多い31の締約国に関する情報は以下のとおりである。

  • 約3分の2の締約国が活発に機能している調整メカニズムをもっているが、被害者の代表が調整プロセスに参加している国は20カ国中17カ国であった。なお、代表が参加していたとしても調整プロセスへの実質的な関与が実現しているわけではない。
  • 締約国は、被害者団体の能力強化と政策等への参加の促進に取り組む必要がある。
  • 多くの国では、リハビリを提供する施設は限られており、特に地方部では施設がない場合が多い。また、施設の利用がかなり高額になることもある。他方で、2016年から17年にかけて、重要な施設が建設されたという報告もあった。
  • 過去数年の間、雇用やトレーニング、生計向上の支援へのアクセスの機会は多くの国で減少した。被害者の多くは生計の維持が困難であるが、そのような機会がさらに減少している。

保有地雷の廃棄、製造、移転
締約国は、2016年に廃棄した220万個の対人地雷を含む5,300万個の保有対人地雷をこれまでに廃棄した。

  • ベラルーシは、2017年4月に保有地雷の廃棄を完了した。同国は、2008年以降、条約違反の状態が続いていた。
  • 35の締約国のうち、31か国が対人地雷を保有している。
  • 1999年当時、保有地雷の数は1億6,000万個に達していたが、現在は5,000万個以下に減少している。
  • アフガニスタン、インド、イラク、リビア、ミャンマー、ナイジェリア、パキスタン、シリア、ウクライナ、イエメン、西サハラの非国家の武装勢力は地雷を保有しているとみられる。

86の締約国は、対人地雷を保有していないことを明らかにしている。そのうち、34か国は過去にも対人地雷を保有したことはなかった。

  • .2017年9月、アルジェリアは、訓練目的で保有していた5,970個の対人地雷を廃棄した。これは領土内の地雷原の除去作業が終わったことを受けての措置である。

41か国が対人地雷の製造を中止した。これらの国には、非締約国であるエジプト、イスラエル、ネパール、アメリカの4か国が含まれる。

  • 11か国が対人地雷を製造する権利を主張している。これらの国は、中国、キューバ、インド、イラン、ミャンマー、北朝鮮、パキスタン、ロシア、シンガポール、韓国、ベトナムである。
  • これらの国のほとんどは現在地雷を製造していないが、インドは積極的に製造しているとの新たな情報がある。

ウクライナとイエメンでは、保有地雷の廃棄がすでに宣言されているが、両国の紛争では対人地雷が使用されている。この事実は、対人地雷がなんらかの形で移転されていることを示している。

  • エジプトとインドの企業が、2017年2月にアブダビで開かれた武器の展示会において対人地雷あるいはその部品を紹介する資料を配布した。
  • 少なくとも9つの非締約国が対人地雷の輸出を公式に一時停止している。それらの国は、中国、インド、イスラエル、カザフスタン、パキスタン、ロシア、シンガポール、韓国、アメリカである。

 条約の履行
全般的に、締約国は対人地雷禁止条約を履行している。条約の中心的な義務は広く尊重されており、不明確な点が明らかになった場合には、適切な方法で対応している。しかし、いくつかの点で懸念点は残っている。

  • ウクライナが条約第5条に違反している状態である。ウクライナは、2016年6月1日に除去の期限を迎えたが、期限の延長の申請をしておらず、承認もされていない。
  • イエメンは、2011年に政府軍が対人地雷を使用し、条約に違反した。2017年11月現在、まだ調査は実施されていない。
  • ギリシアとウクライナは、保有地雷の廃棄期限を守らなかった。ウクライナは、490万個の対人地雷を、ギリシアは643,267個を保有している。
  • 71の締約国が訓練・研究目的の対人地雷を保有している。そのうち、37カ国は1,000個以上の地雷を保有しており、フィンランド、トルコ、バングラデシュは12,000個以上を保有している。
  • 48%の国が2016年の年次報告書を提出した(2015年は45%)。83カ国が2016年の年次報告書を提出していない。また、ツバルは2012年8月28日が期限の第1回目の報告書を提出していない。

★日本語版訳 : 地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)  E-mail:office@jcbl-ngo.org