▼締約国会議について
締約国会議は、オタワ条約に参加している国(締約国)が1年に1度集まり、条約の実施状況などについて意見を交わす会議です。
締約国会議の開催は、オタワ条約の11条で決められています。締約国会議を開く主な目的は、条約の運用や状況について意見を交わすこと、条約の運用の過程で生じた問題について意見を交わすこと、などです。会議の中で参加国は、これまでの1年間の地雷対策への取り組みなどについて報告します。
会議には、締約国以外にも非締約国(オタワ条約に参加していない国)や地雷対策に関わる国際機関、NGOがオブザーバーとして参加することができます。
会議の場所は、基本的にスイスのジュネーブとそれ以外の都市が1年交代で選ばれます。1999年に最初に締約国会議が開かれたのはモザンビークのマプートでした。それ以降、ジュネーブ、マナグア(ニカラグア)、ジュネーブ、バンコク(タイ)、ナイロビ(ケニア)、ザグレブ(クロアチア)、ジュネーブと続いています。
▼カルタヘナ・サミットについて
オタワ条約では、発効から5年毎に再検討会議を開くことが決められており、今年は発効から10年目で、第2回再検討会議の年にあたります。この第2回再検討会議は、2009年11月30日から12月4日まで、コロンビアの歴史的に港湾要塞都市として名高いカルタヘナにて開かれ、「カルタヘナ・サミット」と呼ばれています。
カルタヘナ・サミットには、各国政府代表、国際機関、NGOなどが参加します。そして、2004年にナイロビで開かれた第1回再検討会議の際に出された「ナイロビ行動計画」に照らし合わせてこれまでを振り返り、積み残した課題および今後の取り組みについて検討、議論がなされ、ここで「カルタヘナ行動計画(2010-2014)」が採択されました。この会議は、将来の完全な地雷廃絶に向けて各国が取るべき行動を示すとても重要な機会なのです。
カルタヘナ会議で主に議論されたことには、以下のことがあります。
1.オタワ条約の普遍化:
現在オタワ条約に参加していない39カ国をどうやって条約に入るように促すか議論します。未参加国のうち多くはアジア太平洋の国々です。
2.地雷除去の促進:
条約で決められた期限内(批准から10年)に、埋設地雷の除去が終らない国への支援をどうするか話し合います。
昨年の締約国会議では15カ国が除去期限の延長を求めて、承認されました。今年はアルバニアなど8カ国が期限内に除去を完了できるのに対し、アルゼンチン、カンボジア、ギリシャの3カ国が延長要請を出しました。これら延長を求めている国々のほとんどは、除去作業を続けるために国際支援を求めています。
3.犠牲者支援の強化:
犠牲者支援が計画通りに進んでいないことに対して、国際社会はどう取組みを強化するのか議論します。地雷によって人生を狂わされてしまった犠牲者たちが、安心して自分たちの望む生活をできるようにするために、必要な支援について考えることが求められます。
4.地雷対策と貧困削減:
地雷の問題は、貧困問題と大きく関係しています。大きな開発の流れの中に地雷問題と地雷対策を位置づけて、貧困削減に向けた地域開発の連携が求められます。
今後の地雷対策の充実のために、JCBLはICBLに連なる仲間達と一緒に、日本政府はじめ各国政府に働きかけ、カルタヘナ・サミットで有効な議論がなされるように、また実行可能性の高い「カルタヘナ行動計画」が採択され、その実施に必要な資金援助を各国が約束するようにキャンペーン活動を続けてまいります。
▼ナイロビ行動計画について
2004年にナイロビでオタワ条約の再検討会議が開かれました。再検討会議とは、オタワ条約で条約発効から5年毎に開催されることが決められている会議です。この会議では、条約の運用状況について見直しが行われ、毎年開催される締約国会議よりも深い議論が交わされています。
このナイロビの再検討会議の最後に採択された文書がナイロビ行動計画(Nairobi Action Plan)です。ナイロビ行動計画では、条約の普遍化や埋設地雷の除去、犠牲者支援などの分野ごとに、2004年から2009年までの計画(plan)が具体的な70の行動(action)とともに提示されています。オタワ条約をより効果的に実施していく上で、具体的な行動計画が作られたことは再検討会議の重要な成果といえるでしょう。
ナイロビ行動計画のテキストはこちらから。
しかし、このナイロビ行動計画に問題がないわけではありません。例えば、オタワ条約の交渉が始まって以来問題となっていた地雷の定義や訓練用に保有する地雷の数の制限についての議論に進展は見られませんでした。より具体的に言えば、NGOは訓練用に持つ地雷の数を数百や数千といった具体的な数字を示して制限しようとしましたが、結局そのような具体的な数字は行動計画の中に入れられなかったのです。その他にも、行動計画では地雷を使用する可能性のある非政府主体(NSA)への働きかけに言及しなかったなどの問題がありました。
今後の課題は、各国政府にナイロビ行動計画の実施を進めることを促すとともに、ナイロビ行動計画で十分に考慮されなかった問題について積極的な議論を展開していくことといえるでしょう。
▼ランドマイン・モニター・レポートについて
ICBLは1998年にランドマイン・モニター・レポート(Landmine Monitor Report)の発行を始めました。このレポートは、加盟国・非加盟国を含む全ての国について、対人地雷に関する正確な情報を提供し、地雷問題に関する議論を促し、そして締約国がオタワ条約の義務を実行しているか監視し、その内容をまとめることを目的としています。毎年発行されており、厚さは数センチ、ページ数は千ページを超える膨大なデータ集です。
レポートの執筆にあたっては、100名を越える調査員(リサーチャー)が世界中の国々で情報収集しています。彼らは、政府の答弁や発行する資料を収集したり、新聞の記事や他の記録を読んだり、被害地のデマイナー(地雷除去要員)や被害者犠牲者の支援者、NGO等にインタビューしたりしながらレポートの準備を進めています。
ランドマイン・モニター・レポートには世界各国の地雷の使用、製造、貯蔵、取引、人道的地雷除去活動、地雷回避教育、犠牲者援助などの詳細な情報が掲載されています。これは、地雷に関する情報の中でも最新の情報であり、ICBLや他のNGO、教員、学生、政府など世界中で使われています。
ランドマイン・モニター・レポートはICBLのランドマイン・モニターのウェブサイトから全文ダウンロードすることができます(英文のみ)。